目の前の人は内側の私

見えてくる世界

今朝地下鉄で優先席に座った。
降車駅にさしかかり、立ち上がろうとドアの方に視線を向けたとき、反対側の座席の前に立つ女性の姿が目に入った。

手すりにつかまった片手を少し伸ばすようなかっこうで、その腕を支えに前かがみになって耐えているような表情をしている。とても辛そうだった。

その人のハンドバッグについていたバッチのようなマークが目に入り込んできた。
妊婦さんのマークだった。
とっさにその方の顔を見ると目が合った。

降り際に、気が付かなくてすみません。と言おうかと思った。
でもなにか適切ではないような気がして、声を掛けるのがいいのか分からなくて思わず見つめてしまった。視線を合わせて何か交換した気がした。彼女からは私を責める意識は感じなかった。

その方は私が立ったあとその席のほうに移動したから、おそらく座っただろう。

私の眼の前に立っていたわけではなかったけれど、なにかすごく悪いことをした気がした。
なぜ気が付かなかったのか、そして、なぜ気が付いたときに反射的にすぐさま席を譲れなかったのか。

良心から湧き出るできるかぎりの適切な行動が取れなった自分が情けなくなった。
なにが自分中心だ、なにが感情が大事だ、なにが心の学びよ、とエスカレーターのベルトに運ばれながら、恥じた。

でも直後、あ!っと状況を理解した。

これは、私が私の感情を無視して我慢させて辛い思いをしてきたことを、あの女性を通して見せられたということを。

彼女に対してとっさに適切な行動ができなかったのは、自分が辛いとき、私が自分のために労わる行動を取らないできたからー。

それがわかったら、沸騰するように熱い涙が湧いてきた。
ごめんわたし。ごめん。
今までごめんね。ほんとうにごめんね・・

私の立った席に座っただろう彼女を思った。
そうだ。彼女は座れた。彼女を、座らせてあげられた。最後に私が気が付いたからだ。
良かった・・・。

「優先席に座るのをやめよう」。もしかしたら自省して発想していたかもしれなかった。

そうじゃない。

優先席に座ったのは座席が数席空いていてふと座りたかったから。
そんな軽い願望をさらっと叶えたら、もっと深い願望が目の前に顕れた。
心底そう思った。

ちゃんと感じているんだから、ちゃんと寄り添ってあげよう。
自分の感情に。

目の前の現実は、私の内側を映している。

本当に真実だった。

妊婦さんの彼女は、わたしだった。

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