感情言語の放出は、被害者意識から離脱させ、人間関係を再構築する

感情と共感

Tさんに、いつも感じていた。
Tさんからの依頼の仕方とその伝え方。連絡は常にメール。私への依頼を私をccに入れ、上司宛に送る。「失礼だな」と。

また、感情や感覚的な話をふっても、返事が返ってこない。黙ってスルーされる。
例えばパントリーで一緒になったとき。「今日はいい天気で気持ちいいですねー。」「・・・。」

このことを家族に話すとき、私は言葉として返事がないことから少しジョークを混ぜ、「無視される」と表現していたけれど、被害者的な言い方だとも自覚していた。

本当は、分かっていた。
Tさんは、感覚・感情に応じない。これを何度か経験すると、しだいに「応える感覚と感情がない」と解釈を変換するようになった。

さらに、「相手が(メールで間接的に依頼すると)どういう気持ちになるか」を想像しないから、結果としてそんな対応を平気でしている、と分かり始めた。

だからといって、Tさんが、そうした無の言動を向けた私に対して、何か申し訳ないとか、後ろめたいとか、心を寄せるような感情を持っているとは感じない。
だから、私は少し、傷付いてきたのだ。

それが一発で解消される経験をした。

Tさんが、実務を担当した私を飛び越して、リーダーG氏に物言いのメールを差し挟んだ。一見丁寧で、第三者的に経験から情報を提供しているようだが、こちらの状況は感知せず判断は任せます、という突き放したような文面。以前あった同様の事例を引き合いに出し、「〇〇をする前に、こうすべきではないかと認識している」と書かれてあった。

読んでいの一番に、
「なぜ私に直接言わないの?」
と思った。このメールを読んでいる私の目の前で、Tさんは発信したのだ。
この話はメールで何往復かした後の決定事項であったため、このタイミングなら尚のこと私に直接言うべきだ、と思った。

腹が立った。猛烈に頭にきた。私をバカにしている、と思った。
その感情を「当然だ」と、私は私自身にしっかり迎え入れた。それからTさんに、会議室で10分ほど時間をもらい、相談したいと申し出た。
Tさんは応諾した。

私は会議室でTさんのメールの内容を一つずつ述べ、「Tさんはこうする必要があると仰っているのですよね?」と確認を取った。「はい。」「分かりました。それではこの件は私が引き取ります。」

ここから、私は本題に入った。
「それで、今後このような場合は、私に直接お話しして頂けませんか?この件は私が実務を担当していますので、私を飛び越えてGさんにメールされると、(私が)軽視された気になったんですね。ぶっちゃけ、傷付いてしまって。」

Tさんは、ハッとした顔で手を口元に持っていき、「・・失礼しました。Gさんのメールを読んで、(私が決定事項を)すぐ対応されるんじゃないかと思い、メールを。あと実は私自身がやったことはないんですね。前任者の方がされていたことを思い出しまして。それで。」「ああ、そうだったんですか・・。それでしたら尚のこと、私にそうお話し頂けたら良かったです。私とTさんで話し合って方向性を決めてからGさんにお伝えしたほうが、Gさんのご負担もかからないように思います。」

そして、本題の第2弾を言った。
「せっかく出社して顔を突き合わせて仕事をしていますので、もう少しコミュニケーション取っていけたらと思っています。」

ここでのポイントは、「私はこう感じた。私はこうして欲しいと思っている」とだけ伝えたこと。Tさんの状況をトピックにしなかった。私は今まで、ずっと、ずっと、相手に悪いとの思いが強大で、つい相手の状況を汲み、そっちを基準に考えて自分をないがしろにしてきた。相手に事情はある。そうであっても、私は傷付いた。なによりも、自分の感情を大切に扱いたかった。その上で、状況をより良い方向に導きたい。そう思った。

そして翌週。
Tさんの態度が変わった。
私に直接話すようになったのだ。
これまで連絡はメールかチャットだったし、私が話しかけてもTさんは座ったままだったが、立ち上がって私の方に体を向けてくるようになった。

私はTさんのこの変化に、小さな驚きと感謝の意を込めて、「ありがとうございます」と笑顔で応えた。

私が被害者意識から離脱した瞬間だった。